Project Story 1 日本初、噴霧熱分解法の
量産技術の開発と改良

噴霧熱分解法

コンセプトから製法へ。
実験装置から製造ラインへ。
モノづくりとは、
そのすべてを制すること。

永島 和郎

品質保証部部長

九州大学 大学院 工学研究科 工学博士 1991年入社

1991年、昭栄化学工業は「噴霧熱分解法」を独自の新製法として確立。
実験室で少量しか作ることのできなかった製法を量産化へと昇華し、
高性能電子部品に使われる最先端の電極材料の生産を可能にしたことで
世界のエレクトロニクス・メーカーに貢献する。
入社直後からこのテーマに取り組み、成功に導いた人物とは──。

噴霧熱分解法を使って量産化を。
学生時代からの研究テーマが実を結んだ。

永島和郎は「噴霧熱分解法」を実用化して、昭栄化学工業の飛躍のきっかけを作った技術者の一人。大学4年生の頃、配属された研究室で噴霧熱分解法の研究を選択したのが当社への第一歩だった。

「噴霧熱分解法を選んだのは全くの偶然。研究室にテーマはいくつかあったのですが、どれを選ぶか悩んだ末、同期とあみだくじで決めました(笑)今となってはそれが当社との縁でした。噴霧熱分解法という技術は元々はセラミックに使われるのですが、当時、研究室で私を指導して下さっていた教授が、当社から、より高品質な金属粉末の製造に関する相談を受け、「それでは噴霧熱分解法を応用してはどうか」というアイデアを出したのがテーマのスタートだそうです。ただ、噴霧熱分解法は、一般的には量産には向いていないと言われていた技術。私も一生懸命研究していましたが、正直、その頃はこれで金属粉末を量産することになるとは思っていませんでした。」

大学院を卒業後、永島は自分の研究テーマが縁となって昭栄化学工業に入社。噴霧熱分解法での量産化に取り組むことになる。ただ、研究はしていたものの、入社したばかりの新人には大きいテーマ。装置も実験器具も一から手作りして、ひたすら実験を繰り返す日々が続いた。その努力が実を結び、とうとう目指していたパラジウム粒子が完成。きれいな真ん丸の粒子だった。

装置にへばりついて悩んだ日々。
長い道のりを経てようやく生産体制へ。

ところが喜びも束の間、量産に重要な特性の一つがまったく再現できない。装置の前にへばりつき続けて時間だけが過ぎていく。

「いろいろとやってみましたがさっぱりダメで、1か月以上も原因すら分からない。条件を一つずつ検証してみても、やっぱりダメ。」

打開の決め手になったのは、上司の「不純物なんじゃないか?」という一言だった。さっそく測定してみると、入れた覚えのないとある成分元素が出てきた。最初に使っていた装置にその成分が含まれており、それが炉内に溶け込んでたまたまうまくいっていたことが判明したのだ。この原因を突き止めるのが、一番苦労した点だったという。

「ようやく成功したので、お客様のところへ提案しに行きました。真ん丸な粒子の写真と実験データを見るなり、『これは素晴らしい』と言ってくださって。すぐに採用が決まり、製造を開始しました。ただ、当時は製造装置が自動化されていないため、チーム全員が交代で泊まり込み、24時間つきっきりで生産しました。装置が急に止まったり、納品した粉末に固まった金属粉が混入してお客様にご迷惑をおかけしてしまったりとトラブルもありました。開発した自分たちが生産するという状態が1年ほど続き、その後ようやく生産体制が出来上がったんです。」

時代のニーズに応えてパラジウムからニッケルに。
完成したときは泣きそうになった。

だが、やがてセラミックスコンデンサに技術革命が起こり、パラジウムより格段に安価なニッケルが登場。昭栄化学工業ではパラジウムが圧倒的な好業績を生んでいたためニッケル開発に出遅れ、強力な巻き返しが必要とされた。

「材料がニッケルに代わっても、当社の独創的技術である『噴霧熱分解法』を使いました。ところが、ニッケルは焼くと酸化ニッケルになってしまう。これをどう還元したらいいのか、また壁に当たってしまいました。」

悩み、実験を繰り返す毎日。粉が燃えるなどの失敗を重ねながら、考えられる条件を片っ端から当たっていき、ついにある方法にたどり着く。

「あるとき、装置を開けたら緑色の酸化ニッケルがきれいなグレーの金属粉末になっていました。ついに完成したんです。泣きそうになりました。残念だったのは、一緒に取り組んでいた後輩がその時居合わせなかったこと。一緒に感動したかったんだけど、一人で感動していました。『ああ、うまく行っちゃった』って。」

モノづくりとは自分の手で作り感じること。
自ら行動できる環境がやりがいに。

モノづくりとは、実際に自分の手を動かすこと。昭栄化学工業の技術者は、自分で作ったモノは自分で顕微鏡で見て、触って、検査するのが普通だという。さすがに舐めはしないが、匂いは嗅ぐ。「そんな姿勢でいてこそ、モノを作る技術者と言えると思います」。自分が作ったモノに対する愛情と責任が、さらに良い製品を生み出すことにつながっていくのだ。

「製品は、作るだけでなくお客様に評価してもらわなければ。技術者は挑戦して、実現して、利益を出すことが大事。自分の技術でモノが世に出て売れたら、こんなにうれしいことはありません。昭栄化学工業は経営者がアグレッシブなので幅広いテーマに挑戦できますし、事業全体を把握しながら自分のプロジェクトを動かし、次に何が必要かを自分で考えて発案していける。そこが技術者としてのやりがいにつながっています。」